
障害ある大学生 支援の輪
朝日新聞 2016年3月5日
配慮求める新法 4月施行 板書代筆・PC通訳・・・
滋賀県草津市の立命館大学理工学部の講義室。約70人の中に、前から4列目でスマホを掲げ、板書された複雑な数式を拡大して読む女子学生(20)がいた。隣の席で、「板書代筆」を引き受けた米田大樹さん(23)がノートをとる。
この女子学生は、矯正しても視力0.08以下の弱視で、1メートル先がぼやけて見える。大学では授業が専門的になり、板書のスピードについていけないことが増えた。1年の春、大学の障害学生支援室で週5コマほどの板書代筆を依頼した。
立命館大は10年前に支援室を設置、障害がある15人の学生が、教室移動の補助や教員の話を同時に字幕にするパソコン通訳などの支援を受ける。支援者には、1時間840円の謝礼で学生約50人が登録している。米田さんは昨年7月、同じ学科の女子学生の支援を募る告知を見て、授業の空き時間を利用すれば自分の復習にもなると応募した。リクエストされた字の大きさ、ペンの色で書き写す。先輩として大学での悩み事も聞く。
清水寧教授(計算機物理)もできるだけ丁寧に板書し、女子学生には配布資料を拡大印刷して渡す。「誰もが学びやすい授業とは何か、障害のある学生が授業に参加することで、考え直すきっかけをもらった」
支援室は新年度に向けて障害のある学生への配慮を考える学内向けの冊子を作る。支援室に関わる学生が主体になり、支援をする人、受ける人らへの取材、執筆を進めた。「障害のある学生と他の学生が思いを言い合える雰囲気を学内に作りたい」と米田さん。 女子学生自身は、教室移動は負担が大きく、細かい目盛を計測する物理の実験など参加が難しい授業もあり、冊子にそんな経験を盛り込んだ。
「大学での支援を通じて、障害とはだれもが持っている不得手なことの一つだと思えるようになった。私自身の経験を発信することで、障害や配慮について、少しでも考えてもらえたら」
全国で協議会 課題共有
2014年、全国約60の大学が「全国高等教育障害学生支援協議会」を発足、課題を共有し、支援方法を模索している。
群馬大は今年度、聴覚障害の学生向けに約30キロ離れた二つのキャンパスをつなぐパソコン通訳を始めた。支援者の少ない桐生市のキャンパスの授業映像を、前橋市のキャンパスの支援者に中継して字幕を作成、ウエブを通じ桐生の学生のタブレットに即座に届く仕組みだ。
08年に支援室を設置した京都大は、支援対象約40人の半分ほどが大学院生だ。支援する側にも専門性が求められ、学会など学外での活動も多い。支援室設立から関わる村田淳助教は「障害がある学生が一緒に学ぶことで、大学に多様性が生まれる。周囲の学生や教員の学びにもつながるはず」と話す。





