
家族の「監督義務」争点 愛知・JR事故、1日に最高裁判決
朝日新聞2016年2月26日
3月1日に最高裁は、徘徊中の認知症男性(当時91)がJR東海の列車にはねられた事故で、家族が賠償責任を問うかが争われた裁判の判決を言い渡す。
民法714条は、責任能力がない人の賠償責任は「監督義務者」が負う、と定めている。子どもが起こした事故では両親が監督義務者にあたると認める判決が多い。だが、認知症の人が起こした事故で、最高裁まで争われたケースはなく、判例がない。
JR東海は今回のケースで、振り替え輸送費など約720万円の賠償を求めた。13年8月の一審・名古屋地裁判決は、事故当時横浜に住んでいた長男(65)について「介護方針を決めており、事実上の監督義務者にあたる」と認めた。亡くなった男性と同居していた妻(93)も目を離した過失があったと判断。二人に全額の支払いを命じた。
14年4月の二審・名古屋高裁判決は、20年以上別居している長男の監督義務を否定。民法の「夫婦には協力義務がある」という別の規定を根拠に妻だけに約360万円の支払いを命じた。
最高裁は、二審判決を変更するために必要な弁論を今年2月に開いた。妻側は「夫婦という理由で一律に監督義務者と決めるべきではない。当時85歳だった妻の監督能力も検討すべきだ」と主張。JR側は「妻と長男の両方が監督義務者だ」と訴えた。
民間保険「不十分」の声も
徘徊など認知症の人の行為による万一の損害への備えとして、民間の個人賠償責任保険に関心を持つ人が増えている。
日本損害保険協会のウェブサイトによると、「陳列商品を破損させた」「自転車で歩行者にぶつかり後遺障害を負わせた」など対象となる事故は幅広い。
補償の対象となる人の範囲は一般的に、契約した本人と配偶者、同居の親族(仕送りを受ける別居の未婚の子も含む)。自動車保険や火災保険の特約として契約する例が多い。ただし、車・バイクの事故は対象外。
この保険は、直接他人の身体や財物に直接損害を与えた場合に支払われることが原則なので、名誉棄損などは対象外。大手損保によると、例えば列車が遅れる損害が出ても、電車が壊れず乗客もけがをしていなければ、原則保険金は支払われないという。
認知症の人と家族の会の関係者は「民間保険だけでは不十分、社会的救済の仕組みが必要では」と話す。





