
彼女が人に会う理由
毎日新聞 コラム発信箱 2016年2月2日
音がゆがんだり響いたりして聞こえにくい感音性難聴の人に医師らの声がどう聞こえるのかを再現し、難聴者が病院で何に困っているかを教えてくれる動画(http://8bitnews.org/?p=7149)が、ネット上で話題を呼んでいる。軽度の難聴で薬剤師の宮谷真紀子さんが数百人の難聴者や医療従事者に聞き取りし、9年がかりで制作した。毎日新聞社主催の女性の情報発信講座「毎日女性会議」で優秀作品に選ばれ、本誌朝刊連載「となりの障害 難聴になって」(1月27~29日掲載)のきっかけにもなった。
彼女はひるまず人に会いに行く。私との出会いも1年半前、難聴についてのコラムを書いた私を訪ねてくれたのがきっかけだ。
もう一本の動画「102messages」(http://clearjapan.blog.jp/)が好きだ。彼女は2014年秋、米国の難聴者事情を調べたいと渡米。3カ月の滞米中、ホームステイ先や視察先はもちろん、カフェや長距離列車で出会った人にまで声を掛け、難聴とは何か、どんなふうに誤解されているかを動画を使って英語でプレゼンし、102人から難聴者に向けたメッセージを集めた。この動画には、肌や髪の毛の色が異なる老若男女が手書きのメッセージボードを掲げ、登場する。「失聴や難聴は目に見えない。どうか教えて」「もっと知りたい」「僕はいつでも喜んで君を助けるよ」
宮谷さんは「誰も難聴に無理解なのではなく知る機会がなかっただけ。皆に知ってもらうまで伝え続けたい」。だから彼女は人に会いに行くのだ。
2本の動画は、伝えたい思いや言葉は国境の壁、ハンディキャップを超えてちゃんと相手に届くと、目に見える形で教えてくれた。(小国綾子)





