知的障害者にお金のやりくりの仕方を教える 鹿野佐代子さん(51)

2016/01/16

朝日新聞(ひと欄) 2016年1月16日

 大阪府内にある知的障害者の就労支援施設に勤めながら、働く障害者たちにお金をやりくりする方法を教えている。
 知的障害者が暮らす通勤寮を担当していた時、入寮者とレストランへ行った。誰かが払ってくれるのを待っている人がいた。給料を得ても「持たせると危ない」と、家族から1日千円だけ渡されて暮らす人が少なくなかった。
 「これで本当に経済的自立なのか」。2003年、ファイナンシャルプランナーの資格を取り、障害の特性に基づいた金銭管理を当事者と考え始めた。
 隔月の障害基礎年金と毎月の給料を得ていた女性は、年金が入ると外食などで使い果たし、困窮する生活を繰り返していた。先を見通し、欲求をコントロールするのが苦手。食費、小遣い、必要経費など5費目の袋に2週間分のお金を分けるよう提案し、余ると本人の口座に戻すよう助言した。数カ月後、女性は初めて貯金できるようになった。
 事例をまとめた論文が10年、日本FP協会のコンクールで最優秀賞を受けた。いま、年6,7人の障害者の家計を立て直しながら、全国の特別支援学校や施設、親の会を回り、金銭教育に力を入れる。「能力に応じた経験を積めば、自己管理は身につくんです」