
障害者差別解消法施行を前に(上) 「合理的配慮」知っていますか
朝日新聞 2016年1月12日
4月に施行される「障害者差別解消法」のキーワードといえる「合理的配慮」について、内閣府の資料などをもとに、2回にわたり具体例も交え、かみ砕いて説明。
要望あれば対応に工夫~行政は義務、民間も努力必要
たとえば災害が起きて被災者でごった返した避難所、管理者が「耳の不自由な人がいます!」と伝えたとする。必要な情報は声を張り上げても聞こえないわけだから、張り紙など目で見てわかるよう配慮してもらえるはずだ。
このように、社会生活を送る中で障害者が不都合を感じないよう必要な工夫をしてほしいと要望があった時、必要な配慮をすることを「合理的配慮」という。
合理的配慮を「しないこと」は、障害者差別化意匠法で禁じられている差別にあたる。
合理的配慮は、行政では義務、つまり配慮しなければなりません。民間事業者は義務ではないが、努力しなくてはならない。
ただ、合理的配慮は際限なくしなければいけないわけではなく、あくまで重すぎる負担にならない範囲とされている。配慮の内容は一律に決まるものでなく、障害の特性や場面によって変わり、状況に応じて考える必要がある。
イメージがわきやすいように、具体的な事例を示したり、相談窓口を設けたりする動きが始まっている。
大阪府は昨年3月、合理的配慮の例をあげたガイドラインを作った。知的障害者や家族らで作る「全国手をつなぐ育成会」も、「知的障害者への合理的配慮は、イメージが困難で抽象的になりがち」と、具体例をまとめた。
障害者や高齢者らの旅行を支援しているNPO法人「ウイズアス」(神戸市)の鞍本長利代表理事は、外部のヘルパーが介護することで結婚式に参加できた例をあげ、「障害者や家族を支えられるよう、地域のネットワークづくりにも取り組む必要がある」と指摘する。
障害者差別解消法では「不当な差別的取り扱い」も差別として禁じている。例えば、障害があるという理由だけでお店に入れてもらえないことなどが該当する。
国連の条約、法の契機に~教育・交通・医療・・・対象の幅広く
合理的配慮が盛り込まれた障害者差別禁止法ができたきっかけは、国連の「障害者権利条約」だ。障害に基づくあらゆる差別を禁止し、国に差別をなくす取り組みを求める内容で、すでに合理的配慮も盛り込まれている。日本は2007年に、基本的に賛成することを表明している。
ただ、障害者団体からは、「条約を結ぶ前に対策をもっと充実させるべきだ」という意見が出た。このため国は09年に障がい者制度改革推進本部をつくり、障害者や専門家から意見を聞いた。
11年には障害者についての法律や制度の基本的な考え方を決める「障害者基本法」を条約に合うように改正、13年には基本法で決まったことを具体化するために「障害者差別解消法」をつくった。そして翌年、障害者権利条約を結んだ。
これらの条約や法律では、障害を「障害者本人の問題」ととらえる発想ではなく、「社会の壁が生み出している」という考え方が根底にある。こうした流れが、社会の壁をなくすため、障害者の要望があれば合理的配慮をするという規定につながっている。
障害者差別解消法の対象は、教育や公共交通、医療など幅広い範囲に及ぶ。障害者団体「DPI日本会議」の佐藤聡事務局長は「障害者差別解消法は長年待ち望んだ法律。民間の合理的配慮が努力義務になっていることなど内容はまだ不十分だが、意義は大きい」と話す。
法律の内容や合理的配慮の事例などは内閣府のホームページ(http://www.8cao.o.jp/shougai/index.html)からも調べることができる。





