学びを支える タブレットの可能性(下)「折り合い」の議論を 

2015/12/01

毎日新聞 2015年11月14日

 障害や困難を抱えた子どもたちの学びをタブレット端末でどう支えていけばよいのか。電子教材提供会社「エデュアス」で教育分野でのデジタル機器活用を推進する佐藤里美・事業推進部長(54)と、ディスレクシア(読み書き障害)について啓発や支援を行うNPO法人「EDGE」(エッジ)の藤堂栄子会長(62)に聞いた。

佐藤里美氏
●自然に受け入れる

-障害や苦手意識を抱える子どもが使う上でタブレット端末のよい点は
◆特別な専門機器ではなく、使っている人も多いので、障害があることを象徴しない。自然に受け入れやすく、修理もしやすい。写真撮影、音声録音、文字入力が1台でできる。
-導入の課題は
◆現状では校長や担任の考えに左右される。必要としている子ども自身(場合によっては親)が、自分に欠かせないものだと学校側に説明・交渉し、折り合ってくしかない。その経験も社会で生かせる力になる。
-先生に意識してほしいことは
◆読めなくても情報は得られるし、書けなくても記録できる、そのことを否定しない。学習活動をタブレット端末でどう置き換えるかは、先生がその子の能力を評価できていることが必要。まず市区町村に1人、評価できる先生を育てたいと、2009年から「魔法のプロジェクト」を続けている。延べ約1000人が受講した。
-国は20年までに全ての小中学生に一台ずつタブレット端末を配備する予定だ
◆タブレット端末が教室にあることが当たり前になることで、自然に障害や苦手を補えるようになるかもしれない。先生が使い方をコントロールしたら意味がない。子どもの必要に応じていつでも使えるようにしてほしい。

藤堂栄子氏
●負の面も知って

-自身がディスレキシアと明かしました。息子さんも同じ診断を受けました
◆NPO活動を通して広くディスレキシアを知ってもらいたいため、2年前に検査し、公表した。息子は日本では力を発揮できないと苦しんだ末、15歳で英国に留学し、診断を受けた。今32歳で、シンガポールで建築デザイナーをしている。
-ディスレクシアの子への日本の教育のあり方に異論を唱えてきました
◆教育現場には「紙と鉛筆で繰り返し書かせることが必要だ」という意見が根強いが、私は反対だ。「書けるまで帰しません」などと押しつけるのは、本来の教育からはほど遠いことだ。
-タブレット端末を使った指導をどう考えるか
◆ディスレクシアの子らが何十時間もかかる作文を短時間で書けるなら、タブレット端末を使う方がずっと合理的だ。ただし、負の面も知っておくべきだ。「ヘリ」と打てば「ヘリコプター」と表示される予測変換の機能は、文字を書き、言葉を覚える営みをゆがめかねない。機械に頼りすぎるのはよくないが、極論に陥ったりせず、どこで折り合いをつけるのが合理的か、日本ではその議論が緒にすらついていない。
-米国でディスレクシアへの指導法などを記した法律を定める州が増えている
◆私たちも、全ての教員が発達障害について養成課程で学ぶようにするため国に働きかけていく。