声を自在に「変換法」開発  病気でも自然な意思疎通目指す

2015/10/24

毎日新聞 2015年8月27日

奈良先端科学技術大学院大学准教授・戸田智基さん(38)は、自分の声を取り戻したり、他人の声そっくりに変えたり、「音声変換」の開発に挑む。

どんな声を出せるかは、口やのどといった身体の部位に制約され、自由に変えることはできない。この制約を乗り越えるのが研究の目的で、病気やけがで出にくくなった自分の声を聞き取りやすくしたり、歌手本人の声に変えてカラオケを楽しんだり、用途は多様だ。

コミュニケーションで使う音声変換は、質の高さと変換の速さが欠かせない。基礎技術の開発を手がけ、新領域を切り開いてきた。

当初は意思疎通に使う発想はなかったが、喉頭摘出した身内がいる学生と、何かできないかと研究を始めた。コミュニケーションに使いたいと思い、瞬時に変換できるように改良した。

喉頭は声の元になる音を作るので、がんなどを患って摘出すると声が出せない。ブザーのような振動音を出す携帯装置をのどに当てて震わせ、口や舌を動かせばおしゃべりができるが、振動音がほぼ一定なので機械音声のような声になってしまう。今、抑揚をつける研究をしている。本来ある抑揚を予測する規則を機械学習で求め、患者の話に合わせて振動音の高さを変化させる。元通りの声に変えるハードルは高いが、抑揚が加わるだけでより自然に近づく。戸田さんは、早く世に出したい、と語る。。