声使わず伝え合う 聴覚障害者の意思疎通学ぶ 

2015/10/24

毎日新聞大阪版 2015年7月20日

聴覚障害者(デフ)は、身振りや表情、行動によって意思を伝えたり、相手の意図を読み取ったりする能力にたけている。このような視覚の情報によるコミュニケーションのノウハウに着目した研修事業「デフ・コミュニケーション研修」が大阪で行われている。20代の男女4人が2014年2月に設立した組織「サイレント・ボイス」だ。

研修の参加者は手話の知識は必要なく、手話を学ぶのを目的ともしない。グループ単位で声を使わずに、簡単な図形、最終的には趣味などを伝え合う。実際には、なかなか伝わらないことを経験して、「伝えること」と「伝わること」の違いに気付き「本当のコミュニケーションとは何か」考えてもらうのが狙いという。

「サイレント・ボイス」代表の尾中友哉さんは、デフの両親の間に生まれたが、自身に聴覚障害はなく、音声言語のないデフの世界と、音声がある世界の双方を知る。あるときデフについての映画鑑賞を通じてデフの女性1人と、手話を知る2人と知り合い、デフの能力を生かす事業を思いつく。その後、やはりデフの両親を持つ男性と出会って意気投合。意思伝達のスキルを、健常者との仕事や私生活に生かす研修の構想がかたちになった。

これまで大手企業のグループを含む約100人が研修に参加した。受講者からは、「メールに絵文字をつけるように、対話にも彩りをという講師の言葉が心に残った」、「学んだコミュニケーションの手段は国境を越えて使えると思った」などの声があったという。

尾中さんは「表情から相手が求めていることを知ったり、端的にわかりやすく説明する訓練にもなる。コミュニケーションの新しい伸びしろを見つけるために、研修を使ってほしい」と話している。