出生率変わらず  名古屋市大など 着床前診断で

2015/07/01

毎日新聞 2015年6月17日

 流産を繰り返す夫婦に対して認められている「着床前診断」を受けても、診断を受けなかった人と出産率が変わらないという研究結果を、名古屋市立大とセントマザー産婦人科医院(福岡県)などのチームが、17日付の米科学誌「プロスワン」に発表する。

 着床前診断は受精卵の特定の染色体を調べ、異常のないものを子宮へ戻す。日本産科婦人科学会(日産婦)が2006年から染色体の異常が原因で流産を繰り返す人への実施を容認。一方、「命の選別につながる」との批判もある。

 チームは、流産の原因が染色体の一部が入れ替わる異常と判明した夫婦を対象に、着床前診断を希望した37組と自然妊娠を選んだ52組を約8年追跡した。両グループとも、女性の平均年齢は30歳、流産の経験は約3回。

 その結果、着床前診断を受けて出産した人は67.6%で、自然妊娠の65.4%と差はなかった。流産は診断を受けた人の方が少なくなった。チームの杉浦真弓・名古屋市立大教授(産婦人科)は「診断は費用も高額。出産率が自然妊娠と差がないことを、カウンセリングで説明すべきだ」と話す。日産婦は、流産を繰り返す女性を対象に、受精卵すべての染色体を調べる「着床前スクリーニング」の臨床研究を今年度中に始める予定で、出産率が向上するのかなどを検証する。