障害者就労支援「自由化」20年の現場

2026/11/03

朝日新聞 2026年10月5日

一般的な仕事で働くのが難しい障害者をサポートする就労支援施設は、かつては「授産施設」と呼ばれ、公的な色彩が強かった。しかし、20年前に制度が変わった。事業への参入の自由度が高まった一方、不正請求なども起きている。現場を取材した。

札幌市東区の住宅街にある事業所。2025年秋、近所の家にあいさつにきて「下水道が使えるようになるまでは空き家にする」と話した。この事業所と、西区の事業所2カ所は岐阜市の同じ住所の2法人が指定を受けていた。「就労支援B型」のはずだったが、札幌市はこの8月、事業所の実態がないと判断、この2事業所の指定を取り消した。

札幌市はこれとは別に2月にも二つのB型事業所の指定を取り消した。2025年11月、北海道警は二つの会社の代表者2人を含む3人を詐欺の疑いで逮捕した。札幌市を含む4市の障害者が利用したとする虚偽請求をし、給付金を受け取った疑い。札幌市の調査では、2社で計5億円近い不正請求が明らかになった。

就労継続支援は、2006年に施行された障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)でできた。それまでは自治体や社会福祉法人などが「授産施設」を運営していたが、株式会社など営利法人の参入も認められた。雇用契約を結び、最低賃金以上の賃金が支払われる「A型」と安定的に働くことが難しい人が働いた分の「工賃」を得る「B型」がある。

厚生労働省の調査によると、B型事業所は2024年時点で全国に約1万8千。10年で事業所数は倍以上に、利用者数は3倍超の約53万人に膨らんだ。厚労省は2025年11月に就労継続支援事業所のガイドラインを策定し、利用者が取り組む作業について「不適切な事例が散見される」と注意喚起した。利用者の獲得競争も激化している。利用者に商品券や物品を提供するという広告や、交通費や昼食が無料という宣伝もあり、厚労省は指定基準に違反する可能性を指摘している。

京都市で2015年からA型事業所を運営し、就労継続支援の問題点を指摘してきた松浦一樹さんは「指定取り消しは氷山の一角にもならない。給付金目当てで福祉事業の経験がない新規参入が増えすぎて、収拾がつかなくなった」と指摘する。参入が増えたのは、ノウハウを教えるコンサル会社やフランチャイズ方式でチェーン展開する会社があるためだ。厚労省のガイドラインは、新規参入の際、運営する法人の代表者らに面談や確認をするよう都道府県に求めた。

大阪市は、8月からB型の新規指定申請を受け付けないなどの「総量規制」を始めた。京都市は2025年11月から、札幌市hも2026年1月から同様の規制をしている。