ケア必要な障害者 線引きしない

2026/08/01

朝日新聞 2026年7月16日

つくば市の自宅兼訪問介護事業所で、柏原絵美さん₍38₎は難病ALSで寝たきりの母・真弓さん₍73₎の気持ちを目の動きや雰囲気で読み取る。絵美さんが大学生のときに診断され、3年後、24時間介助が必要となった。ヘルパーで埋まらない時間は家族が介助に入ったが、次第に疲弊。ヘルパーの派遣を待つのでなく、自分たちで母を支えるチームを作ろうと介護事業所を父と立ち上げたが、そこでも人手不足に直面した。

ヘルパー派遣を公的に支える重度訪問介護制度を活用し、事業所では約40人のヘルパーが働くが、人手不足の懸念は今も尽きない。介助の仕事は「大変」というイメージが強く、待遇も事業所の努力では上げづらい。絵美さんは「業界として構造的な問題がある」と指摘する。ヘルパー不足のために「自宅で暮らすこと、さらには呼吸器をつけることを諦める人が増えるのではないか。それを見て見ぬふりをする社会になってほしくない」

長時間の介助が必要な重度障害がある人は、全国に約42万人いるとされる。人手不足が極まっても、生きるのを諦めるような社会にしないために、どうすればよいのか。

つくば市職員の尾崎柊子さん(27)は学生だった2年間真弓さんのヘルパーとして働いた。大学では、障害について学んだ。周囲には当事者が多く、「負い目のようなものを感じていた」が、一緒に学ぶうち「彼らが抱える困難や悔しさと自分の悩みがリンクする瞬間もあった」。今も人手の確保に苦心するケアの現場に向き合う尾崎さんは、自身の経験に社会のあり方につながるヒントがある、と考える。「知らないからと遠ざけてしまうことを乗り越える。一人でも多くの人が障害者と向き合った先に『何とかしよう』というパワーが生まれる気がする」

在宅の重度障碍者を支援するNPO法人「境を越えて」(江東区)は2019年、介助者や支援者を巻き込み、ヘルパー以外の支える力を育むことで業界の人材不足に立ち向かおうと結成された。この6月まで約1年間理事長を務めた佐藤裕美さん₍55₎は10年ほど前、ALSを発症し、突然介護が必要になった。社会から「異物」のように見られていると感じた。誰もが当事者になりうるのに、なった途端に線引きされる恐怖や戸惑いを感じてきた。この線引きが支え手を遠ざけ、支えあう力を押し下げる。そうしないためにも「当事者をいないものとして扱うようないびつな社会にしない。当たり前に生活する先に、誰かを隠したり切り捨てたりしない世界がある」と話す。