すももクラブ 設立の経過

 
■設立の経過
 一昨年の秋頃、10名ほどの失語症の当事者や家族の方々と、「失語症の人達が安心して集える場所が必要だ」と集まって話し合ったのがはじまりです。大阪市では失語症に対する行政の取り組みがほとんど何も行われておらず、病院の訓練を終えた失語症の人が、自宅に引きこもってお  られるのではないかと心配されました。また介護保険によるデイサービスでは、ともすれば失語症の人達はコミュニケーションが取れずに、取り残されて寂しい思いをしている、という声も耳にしていました。そこでCAN(コミュニケーション・アシスト・ネットワーク)として「言語聴覚士もかかわる、失語症の人を中心とした何らかの施設」を作れないだろうかと検討を始め、当初は「作業所」を目標に準備を開始しました。
 さっそく大阪市の障害施設課に出向いて、作業所設立の意思を伝え、助成金の交付を求めましたが、待機中の団体が20程度あり、新規の作業所開設がか なり困難であることを説明されました。しかし、とりあえず失語症当事者に呼びかけて、準備的な集まりを始めることとし、新大阪に借りたCANの集会所 に、月1回程度集まり始めました。のべ20名以上の当事者が集まってこられ、大阪らしくたこ焼きパーティやうどん打ち大会などで親睦を深めながら、作業所開設を目標に活動を始めました。
 しかし昨年2月に大阪市当局から呼び出しがあり、財政的な事情から新規作業所に助成金を出すことは困難であることを告げられ、代わりに支援費を利用 したデイサービスの開設を勧められました。まだその時点では支援費制度についての知識も十分ではありませんでしたが、現実的に作業所開設が困難であるとの判断から、当事者・支援者の方々の理解を求めつつ、CAN理事会でデイサービス開設に方針転換しました。
 5月からはデイサービス開設に向けて、それまで1ヶ月に1度の集まりであったものを毎週集まることとし、麻雀、絵手紙、カラオケ、紙漉き、コーヒー教室、ミニ講座(再発予防等)、募金活動、バザーなどの様々な活動を行いました。参加の失語症当事者は26名、うち常時参加者は14名(身体障害者手帳を持たない人3名を含む)、支援者はST2名、家族ボランティア1名の態勢となり、デイサービス開設の条件がだんだんと整ってきました。  デイサービス開設にはより広い場所と、身体障害者用トイレなどの設備が必要です。そこで駅からは少し遠いものの、財政的な事情からの判断で現在の場所(大阪市淀川区十三東)に12月に移転しました。この引越しも当事者と支援者ですべて行い、ひとつの活動実績になりました。
 CANが事業主になるデイサービスを開設するためには定款の変更が必要になるため、臨時総会を行い、引き続いて所轄官庁の認証手続きに入りました。認可申請などの事務手続きが煩雑を極めたことなどのために当初の開設日程であった4月1日が2ヶ月遅れ、6月1日にようやく開設にこぎつけました。5月30日の開所式には、会場に入りきれないほどの当事者やご家族が来場してくださり、コーラスグループがボランティアで花を添えてくださいました。なにより、準備会からずっと参加してくださった失語症当事者の皆さんが、「自分たちのデイサービス」と考えて支えてくださったことが、無事に開設にこぎつけたことの大きな要因です。

■作業所からデイサービスへ
 当初は、失語症の人々の社会参加の場所として、少しでも賃金が得られ、就労前訓練ができるような「作業所」を作ることを考えました。しかし作業所となると毎日通所してもらわなければならず、高齢で脳卒中後遺症を抱えた人が毎日通所することは困難です。また通常作業所で行われる内職のような仕事は不景気で減少しており、しかも単純作業に気が進まない人も多くおられました。そして何より、大阪市から、財政事情により新たな作業所への助成金交付は困難との通告を受けたことから、現実にこちらが希望しても作業所の開設は無理な状況と判断せざるを得ませんでした。
 代替案として大阪市から提案されたのは、支援費制度を利用した「デイサービス」の開設でした。一昨年から施行された支援費制度は、それまでの障害者福祉としての措置制度に代わるもので、介護保険制度と同じように利用したいサービスを障害者が自ら選べるというものです。これまでは特別養護老人ホームなどの施設においてしか作れなかったデイサービスが、そのような施設をもたない法人も事業所として単独で作れるようになりました。介護保険のデイサービスは、社会指導主事かあるいは社会福祉士のいることが開設の条件ですが、支援費のデイサービスでは特別な資格は必要ないため、作りやすいという事情もありました。
 自己負担額は介護保険のように利用した額の1割負担ではなく、収入に応じて負担額が決まる「応能負担」なので、比較的利用しやすいことが長所でした。年金のみで生活している人は、自己負担はありません。身体障害者手帳さえ持っていれば、1週間に1日か2日、好きな曜日を選んで通うことができます。役所で行う支援費受給申請も比較的スムーズに進みます。こうした様々な条件を考慮して、支援費によるデイサービスが現状では最も適当であるという判断になりました。